2007年08月17日

サブプライム問題は世界金融市場危機に発展

サブプライム問題は世界金融市場危機に発展

8月16日

森  崇

(サブプライム住宅ローン問題の拡大経路)
1.米国住宅市場調整(住宅価格下落や、販売不振から住宅在庫増加)

2.サブプライム住宅ローン問題の悪化(ローンの滞納率上昇や、返済不能件数増加)。ローン貸付会社の損失拡大や破綻 ⇒ ローン貸付会社や住宅建設会社株下落

3.CDO(債務担保証券)を買っているヘッジファンドの損失拡大、銀行の与信厳格化から、ヘッジファンドへの融資急減。LBO初めとするM&A鈍化。既に発表された買収計画が頓挫するとの懸念も出た。また、銀行借り入れを原資とした企業の自社株買い鈍化懸念 ⇒ 米国株全面安となる

4.金融機関の貸し渋り等信用収縮から消費にブレーキがかかり、マクロ景気悪化懸念。

5.海外のCDO投資ファンドに損失拡大。ファンド解約増加から、短期市場での流動性不安高まる。世界的な信用市場の波乱に拡大。世界の主要中央銀行による短期金融市場での資金供給続く ⇒ 世界同時株安


サブプライム問題の進捗状況を判断する手段

1.債務担保証券そのもののリスクを判断できる
マークイット・グループのサブプライムMBS 20種(「BBB−」付け、
昨年7−12 月期に組成)のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS、貸付債権の信用リスクを保証してもらうオプション取引)を対象にしたABX指数(ABX-HE-BBB-07-1)の動き。
ABX_chart070817.jpg


ただし、トリプルA格のものは落ち着きを見せ始めている。下は、ABX指数(ABX-HE-AAA-07-2)の動き。

ABX_chart070817_2.jpg
 

2.サブプライム住宅ローン貸付業者の株価チャート
サブプライム住宅ローン貸付業者最大手カントリーワイド・フィナンシャル株のチャートである。

(カントリーワイド・フィナンシャル株6ヶ月間チャート:茶線=100日移動平均線、青線=200日移動平均線)
CFC_chart070817.jpg


3.買収観測で買われてきた銘柄チャート
計画頓挫懸念から買収観測を背景に買われてきた株の動きを注目したい。以下はメーシーズ(M)株の動きである。株価は200日移動平均線を大きく下回り、いまだ反発していない。これがどこで下げ止まるかが米株全体の帰趨を判断するのに役立とう。

(メーシーズ株6ヶ月間チャート:茶線=100日移動平均線、青線=200日移動平均線)
M_chart070817.jpg


4.投資ファンドの株価チャート
次は、買収ファンドやヘッジファンドの動きである。以下は上場後いまだ日は浅いが、投資ファンドの代表格であるブラック・ストーン(BX)株の動きである。
これも、損害をこうむるとの懸念から売られているわけであるが、この株の反発がやはり米国株全体を見る上で役に立とう。

(ブラック・ロック株上場来チャート)
BX_chart070817.jpg


(ヘッジファンドへの影響)
★CDO(債務担保証券)を買っているヘッジファンドの損失拡大。顧客の解約増加。
★銀行の与信厳格化から、ヘッジファンドへの融資急減。
★ヘッジファンドのリスク許容度低下により、保有しているポジションを世界的に縮小中。
★ヘッジファンドのパフォーマンスは、7月から急速に悪化。


(相場の展望)
投資家のヘッジファンドに対する過信が後退するとともに、ヘッジファンドの取っていた過度なレバレッジ(銀行借り入れ)も縮小化をたどろう。 

今回の株価の急落で、ムーディーズ等の格付け機関による住宅ローン貸付会社の格下げが今後も継続するだろう。これが更なる株価下落を招来する為、株価が上昇しない限り、負のスパイラスが続く恐れあり。これがやがては、実体経済悪化につながることは、歴史の教えるところである。

世界の主要中銀が連日短期金融市場に資金を供給しているが、これはあくまでも短期資金を融通しているだけで、急場しのぎの対症療法。ファンド解約用の資金をとりあえず融通し、ポジションを解消して充当する為の時間稼ぎに過ぎない。
信用収縮を防ごうとのアナウンスメント効果のみ。

目下のところ、FFレート先物相場は、9月のFOMC会議前の緊急利下げ、ならびに、年内0.50%利下げを織り込みつつある。また、米国債相場は続伸。2年債利回りは一時4%を割り込んだ。質への逃避を求めて、資金が流入した。3カ月物財務省証券(TB)の利回りは0.72ポイント低下の3.38%と、株価が暴落した1987年10月以来の大幅な低下となった。

オーストラリアの住宅ローン会社、ラムズ・ホーム・ローンズ・グループは16日、米国で短期資金61億7000万豪ドル(約5710億円)相当の借り換えに失敗したことを明らかにした。ラムズの融資借り換え失敗は、16日のアジア株安の1つのきっかけとなった。投資家の高リスク資産回避の動きが強まり、アジア株は1年ぶりの大幅下落となった。ラムズは、米国のコマーシャルペーパー(CP)に資金調達全体の40%以上を依存する。また、カナダの企業が債務を借り換えられずに緊急資金援助を模索しており、米国発のサブプライム住宅ローン問題は世界各地に飛び火している。

フランスのサルコジ大統領は、サブプライム住宅ローン問題について、あまりに過小評価し過ぎたとして、米国の格付け機関であるムーディーズやS&Pを非難している。


株式相場は再度売りつくされ、利下げを催促するフェーズに入るだろう。

セントルイス連銀のプール総裁は15日、金融不安の広がりが景気の失速につながらない限り、緊急利下げは必要ないとの判断を示した。ただし、9日以降の金融市場の混乱について、一種の信用収縮が起きているとし、市場の安定に万全の対策を講じる意向を表明した。

本日、ムーディーズは、98年のLTCMと同規模のファンド破綻により、世界金融危機に陥る可能性があるとコメントしている。

下のグラフに示される通り、94年末のメキシコ通貨危機、98年のアジア、ロシア通貨危機時には、それぞれ利下げが実際されている。2000年も、12月までは、次の一手は利上げをちらつかせながら、わずか1ヵ月後の翌年1月には緊急利下げに踏み切っている。今やサブプライムローン問題は米国の住宅市場の問題ではなく、グローバルな金融市場に関わる問題となってしまった。95年や1998年と酷似している。従って今回も、恐らくFRBは、利下げに踏み切ることとなろう。     

FF_chart070817_2.jpg                                               

posted by mori at 14:08 | TrackBack(0) | マーケット概況 解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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